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神戸地方裁判所 昭和42年(わ)1581号 判決

裁判所書記官

柏村勇

本籍

兵庫県西宮市甲子園五番二

住居

兵庫県芦屋市川西町一番地

無職

米田義明

大正一二年九月五日生

本籍

神戸市葺合区熊内町三丁目三番地

住居

同市須磨区離宮前町二丁目九番一六号

無職

大東健治

明治四四年七月一一日生

本籍

神戸市東灘区御影本町八丁目四七八番地の二

住居

同市葺合区布引町二丁目五番地

マンション経営

丸尾こと

下糀五鳳

明治四五年二月一六日生

本店の所在地

神戸市兵庫区新開地三丁目四番一七号

法人の名称

朝日興業株式会社

代表者の住居及び氏名

(旧)

兵庫県芦屋市川西町一番地

米田義明

(現)

同県同市同町一番六号

米田義一

右同所同番地

米田登

右被告人米田義明に対する法人税法違反、恐喝、公正証書原本不実記載、同行使、詐欺、預金等に係る不当契約の取締に関する法律違反、強要、所得税法違反、被告人大東健治に対する恐喝、背任、公正証書原本不実記載、同行使、預金等に係る不当契約の取締に関する法律違反、被告人下糀五鳳に対する恐喝、被告会社朝日興業株式会社に対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所は検察官加納駿亮出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人米田義明を懲役三年及び罰金三、五〇〇万円に、被告人大東健治を懲役二年及び罰金三〇万円に、被告人下糀五鳳を懲役一年六月に、被告会社朝日興業株式会社を罰金八〇〇万円に処する。

被告人米田、同大東において、各罰金を完納することができないときは、被告人米田について金五万円を、同大東について金二万円を一日に換算した期間、被告人両名をそれぞれ労役場に留置する。

この裁判確定の日から、被告人三名に対し三年間、それぞれその懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用のうち、別表(二)証人名欄記載の各証人に支給した分は、同表被告人名欄記載の各被告人に、それぞれ単独又は二名連帯して負担させる。

本件公訴事実中、被告人米田が、山本新一、弘瀬齊と共謀のうえ、蛭子武夫らから土地、建物を喝取したとの点については、被告人米田は無罪。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告会社は、当時、神戸市兵庫区福原町八九番地の一に本店を置き、パチンコ遊技場業を主目的として、同所においてパチンコ店オリンピックを、同区湊町四丁目三四番地においてパチンコ店朝日会館及び同毎日会館を、同町一丁目二九七番地においてパチンコ店朝日総本店(昭和四〇年八月一〇日開店)を経営していたもの、被告人米田は、当時被告会社の代表取締役としてその業務全般を掌理していたものであるが、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、

一、昭和三八年一〇月一日から昭和三九年九月三〇日までの事業年度における右会社の実際所得額は五七、二一九、四四七円で、これに対する法人税額は二一、五九三、三七〇円であったのにかかわらず、売上げを除外し架空名義の簿外預金を設定する等の不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、同年一一月三〇日所轄兵庫税務署において、同署署長に対し、所得金額が二、六四三、二八一円で、税額が八七二、二五〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって正当法人税額と申告法人税額との差額二〇、七二一、一二〇円をほ脱し、

二、昭和三九年一〇月一日から昭和四〇年九月三〇日までの事業年度における右会社の実際所得額は二八、四六四、〇七七円で、これに対する法人税額は九、九二〇、一一〇円であったのにかかわらず、前同様の不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、同年一一月三〇日所轄兵庫税務署において、同署署長に対し、所得金額が一四、〇六六、四九七円で、税額が四、六〇一、六二〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって正当法人税額と申告法人税額との差額五、三一八、四九〇円をほ脱し、

第二  被告人大東、同下糀は、昭和四二年八月二九日、白山ビル株式会社代表取締役中林豊成(当五三年)が、同社所有の神戸市葺合区熊内町六丁目五七番地の四等所在の布引ホテルの土地、建物を担保に被告人大東から期間三か月、金利月三分の約定で借用を受けていた合計三、二〇〇万円を返済しようとするや、右担保設定の際右布引ホテルの土地建物の所有名義が被告人大東名義に移転され、その後、右中林が被告人下糀の仲介により近畿相互銀行三宮支店から融資を受けることとなり、それにつき同被告人の息子下糀芳四郎が連帯保証人となり右土地、建物にその求償債権不履行を停止条件とする所有権移転仮登記がなされているのを利用し、右中林から金員を喝取しようと企て、共謀のうえ、同日午前一〇時過ぎごろから午後五時ころまでの間同区布引町四丁目二番地の一七大東ビル四階の前記白山ビル株式会社事務所において被告人両名と右中林との間で右返済をめぐる交渉が行われた際、同人に対し、被告人大東において、このホテルは自分がのっとるつもりで金を貸したのだ、自分の物になれば月三分の金利は適当だが金を返すのであれば月三分なんかで貸す馬鹿はいない、月六分五厘よこせ、銀行の方に金を払いこんで布引ホテルの土地、建物をよそに売りとばす、などという旨、被告人下糀において、銀行融資はやめる、銀行へ電話してやる、などという旨、語気荒く執ように申し向けて金員の交付を要求し、ついに、同人をして、もしその要求を拒み続けるときは右布引ホテルに対する同人の権利に対しいかなる危害が加えられるかもしれないものと感得、畏怖させ、よって、その場において、同人から、前記三、二〇〇万円以外に、同人振出にかかる額面合計七六七万四、〇〇〇円の小切手二通の交付を受け、もって、右小切手二通を喝取し、

第三

一  被告人大東は、昭和四一年六月九日北江政一に対し現金二、〇〇〇万円を貸付期間三月、利子月三分の約定で貸付けるに際し、同人所有に係る兵庫県伊丹市中野字馳出一番の一、同所二番、同所三番の一及び二、同所四番の一、同所五番、同所六番の三、同所七番の二、同市中野字山添八番の一、同所九番の一、同所一〇番、同所一一番の一、同所一二番の一、合計一三筆の宅地三、一二四坪(時価約一億二、〇〇〇万円相当)につき、右貸金債権を担保するため、いわゆる狭義の譲渡担保の方法でその所有権の移転を受けたものであるが、右北江のため前記債務の弁済に至るまでの間、信託的譲受人として右土地を保全すべき任務があるに拘らず、自己の利益を図る目的で右任務に背き債権担保の趣旨を超えて右北江に無断で右土地を担保として他より金員の借用方を企て、同月一七日神戸市生田区楠町二丁目三七番地株式会社七福相互銀行本店において、同行より前記北江に対する債権額および貸付期間のいずれをも超えた貸付金四、〇〇〇万円、返済期限同年九月一五日、利息日歩二銭五厘とする貸付を受けるに際し、そのころこれが担保として右土地につき同行との間に四、〇〇〇万円を極度額とする根抵当権設定契約および停止条件附代物弁済契約を締結したうえ、同月三〇日附でその旨の本登記および仮登記をし、よって右北江に対し財産上の損害を加え、

二  被告人大東、同下糀は、被告人大東の前記北江に対する貸金の返済期限である同年九月七日が近づくや、約定の元利金二、二一〇万円の受領を拒絶するはもとより、右北江を恐喝して財産上不法の利益を得ようと企て、共謀のうえ、弁護士を介して、神戸地方裁判所伊丹支部に、北江において所有者被告人大東に無断で前記土地に立入ろうとし、或は右土地上に建築物を築造し若しくはこれを第三者に築造させて右土地を占拠し、被告人大東の右土地の使用及び占有を妨害する計画がある旨の虚偽の事実を理由とし、被告人大東を債権者、右北江を債務者とする、右土地の使用及び占有の妨害禁止、建築物築造禁止の仮処分の申請をし、同月三〇日その旨の仮処分決定を得たうえ、同年九月一〇日ころ、神戸市葺合区布引町四丁目二番地の一七大東ビルにおいて、右北江に対し、被告人大東において「あんたえらいことしてくれるんやなあ。担保に入れた物件に造成屋が小屋を建てたり莫大な工事代金を請求しているそうやないか。それでこちらも非常に迷惑しておる。」「土地は俺の名義になっておる。売買予約はしておるが誰に売ろうと俺の自由じゃ。」「君の入れた担保物件には故障がついておったんで、物件を保護するためにいろいろ経費を支払ったんで。それは君の責任やないか。」被告人大東、同下糀においてこもごも「裁判をするなら勝手にやれ、あんたの方が勝つかもしれん、しかし勝った時には物件はアメリカの方へ行ってしもうとるぞ。」などと怒嗚りつけ、引続き同市兵庫区熊野町三丁目一〇番地被告人米田の内妻高橋洋子方に赴き、被告人米田に対し、被告人大東、同下糀においてこもごも右北江が担保物件に傷をつけた、そのために諸経費がかかったなどと述べ、被告人大東において、「会長、こんなもんよそへ売ってしまおう思うてまんねん。」などと言って右北江に対し、三、三〇〇万円の支払いと右土地を売却しその代金から右金員を差引いた残額の半分を渡すよう要求し、右要求に従わないときは右土地を返還しないだけでなく、被告人大東らにおいてこれをほしいままに処分、売却する態度を示して北江を脅迫し、その際、被告人米田においても同人に対し「俺が手を切ったらどうなるか考えてみい。土地は永久にお前には返らんようになるぞ。裁判をするならしてみい。ベテランの弁護士の意見も聞いたがこの件は結局北江の負けということや。ええ加減のところで話をつけたらどないじゃ。」などと言い、そのころ、被告人米田において被告人大東に対し「登記を完全にしとけ」などと言って、同被告人に対し暗に右土地の登記に第三者を関係させるように助言し、ここに、被告人大東、同下糀と同米田との間に前同様北江を脅して財産上不法の利益を得ることにつき互に意思を通じ、同年一〇月中旬、同市同区湊町四丁目三四番地朝日興業株式会社応接室において、北江に対し、被告人大東において「わしの名義になっとる土地やから、売ろうと売るまいとわしの自由じゃ。」と怒嗚りつけ、被告人米田において「大東は三、三〇〇万円要求しているが、二〇〇万円を別にやらないかんので、三、五〇〇万円にして応じてやったらどうか。それだけ原価がついとるんやが、それ以外にあと何ぼつけるねん。」「こんな事件物に金を出してやって解決してやるのだから、翌日になって土地が売れたいうて五、五〇〇万円だけ持って来られたのではわしの立場はなくなるぞ。わしに対する利子や礼はどうするつもりや。」などと言って再三不当な金額を要求し、同人が右要求を拒み続けるときは前同様被告人大東らにおいてほしいままに右土地を処分、売却する態度を示して同人を脅迫し、同人をその旨感得、畏怖せしめ、よって同日同所において、同人をして被告人大東、同米田に対し昭和四二年一月一五日までに金六、五〇〇万円、支払いが右期日以降になる場合は金七、〇〇〇万円を支払う旨約束せしめ、もって財産上不法の利益を得、

三  被告人大東は、同年九月一九日、伊丹市伊丹字鳩垣内六二九番地所在神戸地方法務局伊丹支局において、情を知らない司法書士杉山勇夫を介して同支局係員に対し、前記土地一三筆につき全くその事実がないのに同月一七日附で被告人大東から同被告人の内妻福田キクエに所有権の移転があった旨虚偽の申立をし、よって即時同所において情を知らない右係員をして不動産登記簿の原本にその旨不実の記載をさせたうえ、即時同所にこれを備え付けさせて行使し、

四  被告人米田は、同年一〇月一八日、前記神戸地方法務局伊丹支局において、情を知らない司法書士杉山勇夫を介して同支局係員に対し、前記土地合計一三筆につき全くその事実がないのに、同月一五日附で被告人大東から藤沢正に所有権の移転があった旨虚偽の申立をなし、よって即時同所において情を知らない右係員をして不動産登記簿の原本にその旨不実の記載をさせたうえ、即時同所にこれを備え付けさせて行使し、

第四  被告人米田は、

一  兵庫県芦屋市山手町三番地、三番地の五、八番地、八番地の一、に合計三千三百坪(時価約一億数千万円相当)の土地を担保に他から約三千万円の融資を受けその返済に窮していた木村輝男こと李斗玉から、右土地を所有権移転の方法による狭義の譲渡担保に提供して金員借用方の申込みを受けるや、担保名下に右土地を騙取しようと企て、昭和四一年八月二二日ころ、芦屋市川西町一番地の被告人宅において、右李に対し、真実は当初から、弁済期にその弁済を受ける意思もまた弁済を受けて右担保に提供した土地を返還する意思も全然ないのにあるように装い、「二ケ月を弁済期限として三千四百万円を支払えば担保物の返還に応ずる。なお、右期間を過ぎても更に五日ぐらいは猶予を与える」などと申し欺き、その旨同人を誤信させたうえ、即時同人をして被告人との間に、売主を右李、買主を被告人、代金三、一九六万円とする、右土地の売買契約を締結させたうえ、右土地の所有権移転登記に必要な右李所有の権利証、委任状などの書類を交付させ、翌二三日神戸地方法務局芦屋出張所において、司法書士北田基司を通じて、右土地に清水嘉寿名義で所有権取得の登記を遂げ、もって、これを騙取し、

二  木本一馬こと孫圭鎬並びに司法書士北田基司らと共謀のうえ、昭和四一年八月二三日、前記神戸地方法務局芦屋出張所において、前記記載の土地につき所有権移転の登記申請を行うに際し、同出張所係員に対し、真実は、同土地が前記のごとく前記李から被告人に対しその所有権が移転されたもので、右李から清水嘉寿に売買された事実がないのに昭和四一年八月二二日付で前記李から清水嘉寿に売買による所有権の移転があった旨虚偽の申立てをし、よって、同日同所において、情を知らない右係員をして不動産登記簿の原本にその旨不実の記載をさせたうえ、即時同所にこれを備え付けさせて行使し、

第五

一  被告人米田、同大東の両名は、共謀のうえ、別表(一)記載のとおり、前後四回にわたり、被告人米田において、小樽信用金庫札幌支店(当時の支店長佐藤公明)に期間六か月、金額合計二億円の定期預金をするに際し、同表記載のとおり、金融ブローカー小林正雄らを介し、当該各預金に関して正規の銀行利息のほかに、道央水産食品株式会社総務部長兼株式会社道央ビルデング常務取締役武田庄司より、特別の利益を得る目的をもって、右武田と通じ、同金庫前記支店を相手方として、当該各預金にかかる債権を担保に提供することなく、同金庫が同人の指定する右道央水産ないし道央ビルデングに対して資金の融通をなすべき旨を約し、前記各預金の裏利息として合計一、六〇〇万円を受領して前記各預金をなしもって、預金に関し不当な契約をし、

二  被告人米田は、昭和四二年九月二六日および同月二七日の二回にわたり、札幌市北四条西二丁目小樽信用金庫札幌支店において、同金庫専務理事吉田庚子郎、同金庫常務理事北田健吉および同支店支店長事務取扱赤島栄正ら三名に対し、前記第一記載のとおり被告人が導入した期日未到来の定期預金合計二億円につき、即時解約方を申し入れてその払戻しを要求し、右三名から、同預金は簿外預金になっているので調査したうえでなければ払戻しに応じられない旨拒絶されるや、「お前らは俺が不正の事をやっていると怪しんでいるのだろうが俺は不正な事は何もしていない、善意の預金者なのだ。」「俺は北海道警察旭川方面本部の小堀本部長とは昵懇の間柄だ。もしお前らが払わんと言うのなら本部長に連絡して一斉に捜査に入ってもらう。いつでも連絡すれば警察が来てくれるように本部長とは打合わせができとるんや。俺はこれまでの経過から見てお前ら役員もぐるになっていると思っている。あくまで払わんと言うなら俺はお前ら役員を刑事問題として告訴する。告訴するとともにこの件は新聞社に言いに行って騒ぎたててやる。」「俺には国会を動かす力があるんだ。帳簿に載っていないということで断られたのでは預金者の立場がない、これは一般の金融機関全体の問題にも関係するから国会で問題にする。」などと執ように申し向けて脅迫し、期日には必ず支払う旨の誓約書を書くよう要求し、右吉田らをして、もし被告人の要求に応じないときは、同人らの名誉、営業等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨畏怖させ、よって同月二七日、同所で、同人らをして前記二億円の定期預金は必ず期日に支払う旨の誓約書を作成交付させ、もって、義務のないことを行わせ、

第六  被告人米田は、神戸市兵庫区福原町八九番地の一所在(当時)朝日興業株式会社の代表取締役として(当時)、遊技場経営により役員報酬をうるとともに、個人としてビル、文化住宅等の不動産の賃貸、宅地建物の分譲、貸金等し、よって収益を挙げていたものであるが、所得税を免れようと企て、

一  昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの実際所得額は三九、〇二九、三五三円で、これに対する所得税額は二〇、八六五、五〇〇円であったのにかかわらず、収入金の一部を除外し、経費を架空計上する等の不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四一年三月一四日、所轄兵庫税務署において、同署々長に対し、所得金額が一〇、〇五七、六八三円で、税額が三、八一三、九八〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって正当所得税額と申告所得税額との差額一七、〇五一、五〇〇円をほ脱し、

二  昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの実際所得額は八七、九一七、九一六円で、これに対する所得税額は五五、九〇二、五〇〇円であったのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四二年三月一五日、前記税務署において、同署々長に対し、所得金額が一三、三三九、九二〇円で、税額が五、四二八、六六〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって正当所得税額と申告所得税額との差額五〇、四七三、八〇〇円をほ脱し、

三  昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの実際所得額は一二一、六八四、九〇六円で、これに対する所得税額は八〇、七八八、四〇〇円であったのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四三年三月一五日、前記税務署において、同署々長に対し、所得金額が二二、四〇三、八九三円で、税額が九、八〇一、八七〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって正当所得税額と申告所得税額との差額七〇、九八六、五〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

書証の作成日付の記載方法は次の例による。

例 ○○の検察官に対する昭和四二年一一月一九日付、同月一三日付各供述調書…………○○の検察官に対する各供述調書(42・11・9、11・13)

判示第一の全事実につき、

一、西山泰元、五十川浪夫、米田律子(42・11・4)、三浦康子、北山順一(42・11・9、11・13、11・13、11・16、11・22)の検察官に対する各供述調書

一、登記官作成の登記簿謄本(41・11・2)

一、大蔵事務官作成の簿外売上高入金明細表(42・10・12)、簿外預金利息明細表(10・12)、調査てん末書(41・9・30)、未納事業税・租税公課計算書(42・10・12)

一、西山泰元作成の確認書(41・9・24)

一、第一回公判調書中の被告会社代表者米田義明及び被告人米田の各供述部分

一、被告人米田の検察官に対する各供述調書(42・11・20、11・21、11・21、11・24)

判示第一の一事実につき、

一、兵庫税務署長作成の証明書(「記録第102号」とあるもの)

判示第一の二の事実につき

一、兵庫税務署長作成の証明書(「記録第103号」とあるもの)

判示第二の事実につき、

一、第九回、第一一回、第一三回公判調書中の証人中林豊成の各供述部分

一、第二〇回公判調書中の証人横山泰敏の供述部分

一、松尾寛昭、宮方万浩の検察官に対する各供述調書

一、登記官作成の登記簿謄本二通(42・12・25、44・5・21)

一、中林豊成、被告人大東作成の「条件付店舗営業権譲渡契約証書」と題する書面写し一通

一、中林豊成作成のメモ写し一通

一、被告人大東の検察官に対する供述調書(43・6・24、6・25、7・4、7・7、7・8、7・10、但し43・6・25、7・7、7・8は被告人大東につき)

一、被告人下糀の検察官に対する供述調書(43・7・6)

判示第三の全事実につき、

一、三の第三五回公判調書中の証人磯田亮一郎の供述部分

一、北江政一(八通)、中山武雄(二通)、杉山勇夫(二通)の検察官に対する各供述調書

一、検察事務官作成の捜査報告書(43・7・30)

一、押収してある不動産売買契約証書写し一通(昭和四七年押第一二八号の一)、売買予約証書写し一通(同年同号の二)

一、被告人大東(43・7・20、8・2、8・7、8・8、8・10、但し8・8は被告人大東につき)、同米田(43・8・1、8・7、8・8)、同下糀(43・8・8)の検察官に対する各供述調書

判示第三の一、第三の二の各事実につき、

一、橋本良澄の検察官に対する供述調書

判示第三の一の事実につき、

一、三の第二五回、同第二六回、同第二九回公判調書中の証人鈴木譲の各供述部分

一、佐藤朗の検察官に対する供述調書四通

判示第三の二の事実につき、

一、東谷義人の検察官に対する供述調書二通

判示第三の三、第三の四の各事実につき、

一、検察事務官作成の捜査報告書(43・8・9)

判示第三の三の事実につき、

一、福田キクエ(一通)、金井末男(二通)の検察官に対する各供述調書

判示第三の四の事実につき、

一、北山順一(43・8・9)、藤沢正(43・7・30、8・21)の検察官に対する各供述調書

判示第四の事実につき、

一、四の第四二回、四の第四四回各公判調書中の証人李斗玉の各供述部分

一、四の第四〇回公判調書中の証人川本忠臣、同成瀬大治の各供述部分

一、四の第三七回公判調書中の証人久保田日出和の供述部分

一、大東健治(43・7・18、7・19、7・25)、遊田常義(43・7・25)、孫圭鎬(43・5・31、7・16、7・26、7・29、7・29)、山田正光(43・7・18)、清水嘉寿、北田基司、末正久左衛門(三通)、川上甫、杉田太市(三通)の検察官に対する各供述調書

一、登記官作成の登記申請書謄本

一、登記官作成の登記簿謄本七通

一、押収してある登記権利書写一通(昭和四五年押三〇八号の一一)、念書二通(同号の一二、一三)、念書及び登記簿謄本四通(同号の一六)、不動産売買契約書一通(同号の一四)、領収証一通(同号の一五)

一、四の第五三回公判調書中の被告人の供述部分

一、被告人の検察官に対する各供述調書(43・7・3、7・16、7・20、7・22)

判示第五の全事実につき、

一、佐藤公明(42・12・20、43・2・21((いずれも謄本))、武田庄司(42・12・22、43・1・16、2・14((いずれも謄本))、小林正雄(43・8・27、8・28((「11」とあるもの))、8・28((「12」とあるもの)))、小松崎茂(43・8・27、8・28)、古矢敦子(43・3・2((謄本))、9・5)、被告人大東(43・8・16、8・17、8・30)の検察官に対する各供述調書

一、第八回公判調書中の被告人米田、同大東の各供述部分

判示第五の一の各事実につき、

一、被告人米田の検察官に対する各供述調書(43・8・29、9・3)

判示第五の二の事実につき、

一、吉田庚子郎、北田健吉、赤島栄正、角田勇の検察官に対する各供述調書

一、被告人米田の検察官に対する各供述調書(43・8・11、8・15)

判示第六の全事実につき、

一、日高和一郎、宋五鳳(43・8・24、8・21)、遊田常義(43・8・21、8・21、8・24)、上田利幸、林武夫、岩崎忠義、進藤のぶゑ(43・8・12、8・20)、今橋治夫、金鐘云、吉田靖史、魚野為之助(43・8・13、8・24)、石原正勝、久保田日出和(43・8・19)、宗台允(43・9・20、9・24、10・15)、前住和郎、中林俊三、柳香烈、北山順一(43・9・19、9・28、44・2・13)、洪辛生、金一文、宋明岳(43・10・15、10・15)、井川吉次、立花敏夫、吉原義男、滝本辰雄(43・9・10、9・24、11・26)、安部正利(43・9・14、9・24、11・21)、田中栄一、宮田弘、上原敏男、高橋種顕、米田律子(43・9・21)、古矢敦子(43・9・6、10・22、10・22、12・14)、西勝孝子(43・9・6、10・22、12・14)、小林修(43・10・30、11・1)、松本浄、田中栄一、高松末男、大汐庫次、宮田弘、正井泉、青井源次郎、松本一美、山本新一(43・9・5)、良本好子、岩井恒光、清水清、江澤満、田路吉一、駒田参次、大汐庫次、山田正光(43・6・28、8・13)、孫圭鎬(43・8・5)、小川春男(43・7・30、8・9((いずれも謄本)))、藤沢正(43・7・30、8・21((いずれも謄本)))、大東健治(43・8・20、9・16、9・16、9・17、10・1、10・2、8・20((謄本))、8・21((謄本))、11・8)の検察官に対する各供述調書

一、松島浩、高橋昇平、河原吉郎、川嶋一雄、井川吉次、立花敏男、井岡きくの、兼沢勝彦、正井泉、馬飼野智、日高和一郎、吉田靖史、進藤のぶゑ、中村健二、伊坂光郎、岩部昇、菅原吾一、三浦康子、高橋新蔵、高橋利子、西川頼子、藤井鉄治郎、瀬川しのぶ、藤井政輝、北山順一に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一、大蔵事務官作成の銀行調査てん末書

一、押収してある税金関係書類綴一冊(昭和四五年押第二一二号の三)、賃貸借契約証書一八通(同号の五の一乃至五の一八)、同四通(同号の九の一乃至九の四)

一、第一二回公判調書中の被告人米田の供述部分

一、被告人米田の検察官に対する各供述調書(43・9・13、9・16、9・24、9・26、9・27、10・2、10・3、44・1・16、1・18、1・18、1・18、2・14、2・22)

判示第六の一、第六の三の各事実につき、

一、押収してある日記帳五冊(昭和四五年押第二一二号の一七の一乃至一七の五)

判示第六の一の事実につき、

一、兵庫税務署長作成の証明書(「記録第33号」とあるもの)

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書・同説明資料(それぞれ「記録第55号」「記録第56号」とあるもの)

一、押収してある書類綴一冊(昭和四五年押第二一二号の一)、賃貸借契約証書一通(同号の二)、同六通(同号の四の一乃至四の六)

判示第六の二、第六の三の各事実につき、

一、押収してある公正証書正本一通(昭和四五年押第二一二号の六)、未納税金一覧表(同号の七)

判示第六の二の事実につき、

一、兵庫税務署長作成の証明書二通(それぞれ「記録第34号」「記録第35号」とあるもの)

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書・同説明資料(それぞれ「記録第57号」「記録第58号」とあるもの)

判示第六の三の事実につき、

一、兵庫税務署長作成の証明書四通(それぞれ「記録第36号」「記録第37号」「記録第38号」「記録第39号」とあるもの)

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書・同説明資料(それぞれ「記録第59号」「記録第60号」とあるもの)

一、押収してある金銭出納帳五冊(昭和四五年押第二一二号の八の一乃至八の五)、家賃収入等関係書類綴一冊(同号の一〇)、預り書(山田正光の名刺)六枚(同号の一一乃至一六)、家賃関係バインダー一冊(同号の一九)、金銭出納帳一冊(同号の二〇)

(当裁判所の判断)

一、判示第二の事実について

前掲関係各証拠によって認められる被告人らの前示犯行態様に照せば、額面合計七六七万四、〇〇〇円の小切手二通について恐喝罪(既遂)が成立すると言わざるを得ず、仮に被告人らにおいて中林に対し右金額中一部に相当する債権を有していたとしてもこの結論は左右されない。

二、判示第三の各事実について

1  北江、被告人大東間の本件土地の売買契約の性質について検討するに、譲渡担保(広義)には、売渡担保(類似の他の名称で呼ばれる場合もある。)と譲渡担保(狭義)の二種があり、両者の基本的差異は経済的に融通された金額について融資者が法律上償還請求権(債権)を有するか否かの点にあり、これを有する場合が狭義の譲渡担保、これを有しない場合が売渡担保であるということが判例、学説上明らかにされている。ところで具体的な契約が右いずれの類型に該るかは一義的に明らかであるわけではなく、結局当事者が用いた用語や法律構成にとらわれないで事柄の実体に則して判断すべきであると考えられている。

前掲関係各証拠に基づいて検討するに、北江、被告人大東間の契約は、「売買」の形式を採り、同時に両者間で昭和四一年九月七日を期限とする「売買予約」も締結されているのであるが、他方北江が被告人から金二、〇〇〇万円を経済的に融通してもらうに至った経緯、右融通額が目的物の時価に比し著しく少額であること、「売買予約」の期限が右「売買」時から三か月足らず先に定められていること、さらには、右「売買」契約が締結された際の両当事者の交渉状況、被告人大東側の説明等に照せば、右「売買」契約は狭義の譲渡担保を設定する契約であると認めるのが相当である。

2  ところで、前掲関係各証拠に基づいて検討するに、右譲渡担保設定契約が締結された際同時に「売買予約」契約が締結されていることや契約後の目的物の利用をめぐる両当事者間の関係(北江側は本件土地上に建設予定の市場の行政許可の更新を受けるにつき被告人大東の同意を求めるなどしている。)等に照せば、右譲渡担保設定契約は内、外部の両関係においても目的物の所有権を被告人大東に移転させる内容の契約であり、これによって目的物の所有権は内、外部とも被告人大東に移転したと認めるのが相当であるが他方狭義の譲渡担保である以上、被告人大東は担保の趣旨においてのみ右所有権を信託的に譲渡されたにすぎず、債務の弁済期まで、目的物の所有権を北江のために保全すべき任務を負っていることは明らかであり、この任務に違背して判示のような形態の行為に及ぶことは、右担保の趣旨に反するものとして許されず、背任罪を構成すると言わねばならない(判示第三の一の事実)。

3. 前掲関係各証拠に基づいて検討するに、判示第三の二の事実は、北江から被告人大東に二、〇〇〇万円の債務の担保(狭義の譲渡担保)として差出され、従って北江としては元利金を弁済してこれを受戻す権利のある土地(犯行は右債務の当初の弁済期限後にもわたっているが、被告人米田の関与の時期、態様をも合わせ考えれば、右期限経過にもかかわらず北江の右権利はなお消滅していないと考えられる。)を被告人大東においてほしいままに処分、売却する旨北江を脅迫して法外な金員の交付を約束させたという事案であり、そのために右土地について仮処分までし、そのことを北江に対する金員要求の手段として最大限利用していること、脅迫行為も執ようで且つ威迫的であること、北江に約束させた金額が元利金に比し極めて高額であること等を勘案すれば、被告人らの行為は恐喝罪を構成する違法な行為であると言うべきである。

ところで、被告人三名の間の本件犯行の共謀について検討するに、被告人大東、同下糀間の共謀の点は前掲関係各証拠により前示のとおりこれを認定することができ、さらに両被告人と被告人米田間の共謀の点も、(1)被告人米田は本件土地をめぐる北江側と被告人大東側との紛争に自ら関与していく以前から、右紛争の実体を相当程度知っていたと認められること、(2)北江が同年九月六日ころ弁護士を介して、被告人米田に被告人大東に対する債務額を供託するため資金の融通を依頼したとき、被告人米田は一旦これに応じ現金まで用意して右弁護士へ届けるという態度をとる一方で双方の弁護士に対し「君らこんな事件にならんようなものを事件にして供託までするつもりか、そんな汚い金儲はするな。わしに全部任せ。わしが金を出して解決してやる。」などと怒嗚りつけ、北江に債務額の供託をしないよう圧力をかけたこと、(3)同月一〇日ころ高橋方において、被告人大東、同下糀が前示行為に及んだ際被告人米田自身も前示威迫的言動に及んでいること等の諸事実及び同年一〇月中旬ころの被告人の事務所での同被告人の役割、言動等に照せば、少くとも同年九月中旬ころ被告人米田が同大東に前示助言に及んだ時点で意思の連絡ができ、共謀(順次共謀)が成立したと認めるのが相当である。

なお、弁護人らは被告人らの利得額について争うけれども本件事案は、前提として被告人大東において土地を当初の契約の趣旨に従い北江に返還する意思があったとの点が甚だ疑わしい事案であって、同被告人の正当な権利部分、即ち元利金二、二一〇万円について同被告人において正当な権利行使をする意思があったとは認められず、北江に対する金額の要求もいきなり三、三〇〇万円を提示しそれを基礎にするなど右権利部分を当初から問題としていない態様で行われていること等を勘案すれば、被告人らの利得額については前示のとおり認定するのが相当である。

4  判示第三の三、第三の四の各事実は、いわゆる中間省略登記とは異なる事案であり、いずれの登記方法についても合理性がないばかりでなく取引の安全を害する虞もあるから、被告人らの各所為は公正証書原本不実記載罪(同行使罪)を構成する違法な行為であると言わねばならない。

三、被告人米田に対する昭和四三年七月二三日付起訴状記載第一公訴事実について

1. 本件公訴事実は、

「被告人は、蛭子武夫が実弟熊木貞夫の名義で所有し、小林重一らが居住していた神戸市兵庫区西出町四八番地の一所在宅地八七・〇八坪および同地上の木造居宅二棟のうち、五二・二七坪につき、神戸市において同市の土地区画整理事業用地として買収する計画があることを聞知するや、山本新一および弘瀬齊と共謀の上、前記蛭子らを脅迫して右宅地建物中の右買収予定部分を被告人名義に取得し、これを神戸市に対して高価格で買収させて利を得ようと企て、昭和三七年一〇月初旬から同年一一月初旬までの間、前記山本新一および弘瀬齊において、再三にわたり、前記熊木の経営する同市生田区楠町四丁目一一番地蛭子商事株式会社および同区同町六丁目三一番地の一萬栄ホテル等で、前記熊木およびその代理人田中末次郎らに対し、交々、「親父(被告人のこと)の使いで来た。あの物件を売ってくれ」「あの物件をお前らだけに勝手にさせんぞ」「あの家にはうちの若い衆が寝泊りしているからお前の方で市に売ろうとしても若い衆をいすわらせて売らさん。」などと申し向け、更に同年一〇月中旬ごろおよび一一月一〇日ごろの二回にわたり、前記熊木および蛭子を同市兵庫区熊野町三丁目一〇番地被告人の内妻高橋洋子方に連行した上、同所で、同人らに対し、被告人において、「うちの若い衆があんたの店にごちゃごちゃ言うて行っているのは知っている。あの買収予定地の部分を俺に任せろ。売ってくれ。」「売らなんだら考えがある。」「あんたが持っている限り現在住んでいる小林も若い衆も立退かせないし、市に売ることはできんぞ。」「あの家にはいろいろ複雑な問題があって、あんたでは解決ができんのだ。」「四〇〇万円でどうか。」などと執拗に申し向けるとともに、右山本新一らにおいて、「親父の言うことを聞け」などと怒号して右金額で被告人に譲渡すべきことを要求し、右蛭子らが、あくまでも被告人の要求を拒み続けるにおいては、同人らの財産、身体、営業等にいかなる危害を加えるかも図り知れないような態度を示して同人らをその旨感得畏怖せしめ、よって、一一月一〇日頃、遂に、同人らをしてその意に反して前記買収予定部分の土地、建物を被告人に四〇〇万円で譲渡する旨承諾するの已むなきに至らしめ、同月二〇日、右宅地五二・二七坪および同地上の居宅部分(時価約九七三万円相当)を被告人名義に所有権移転の登記を完了して、これを喝取したものである。」

というものであり、右行為が刑法二四九条一項に該当するというのである。

2 被告人米田と弁論分離前の相被告人(以下同じ)山本新一及び弘瀬齊間の共謀の点について検討するに、蛭子武夫(二通)、弘瀬齊、米田成司、田中末次郎および高原博の検察官に対する各供述調書、第二二回、四の第二三回および四の第二六回公判調書中の証人熊木貞夫の各供述部分、四の第二五回公判調書中の証人小林チョノの供述部分、四の第二八回公判調書中の証人高原博の供述部分、四の第二九回公判調書中の証人米田成司の供述部分、四の第三五回公判調書中の証人重崎正一の供述部分、登記官野口村雄作成の登記簿謄本八通、押収してある不動産売買契約証書二通(昭和四五年押第三〇八号の一の一および一の二)、四の第四一回公判調書その二中の被告人米田の供述部分によれば、

(1)  前記山本、弘瀬の両名は、小林重一が蛭子武夫に対する四〇〇万円の借受金の担保として神戸市兵庫区西出町四八番地の一および同五一番地の四所在宅地合計一〇六・八五坪(三五三・二二平方メートル)ならびに同地上の木造建物三棟を右蛭子の実弟熊木貞夫名義にして譲渡担保に供したが、その期限までに右債務の返済ができなかったため右蛭子らから右不動産の明渡を催促されていることや、右土地のうち五二・二七坪(一七二・七九平方メートル、以下「本件土地」という。)につき神戸市において同市の土地区画整理事業用地として坪当り一五万円程度で買収する計画があることなどを聞知するや、前記蛭子、熊木を脅迫したうえ、一方被告人米田に資金を出してもらい、本件土地及び地上建物(以下「本件建物」という。)を取得し、本件土地を神戸市に買収させて利を得ようと企て、共謀のうえ、昭和三七年一〇月初旬ころ、神戸市生田区橘通四丁目一一番地蛭子商事株式会社において、前記熊木に対し、「西出町の土地を売ってくれ」などと執拗に申しつけ、同月中旬ころ、同区楠町六丁目付近萬栄ホテルにおいて前記蛭子の代理として来ていた森重菊十郎や田中末次郎に対し、「わしの方も小林に金を貸しているのや、お前らだけに小林の土地建物を勝手にはさせんぞ。」「小林の家にはうちの若い衆が寝泊まりしている。お前らが神戸市のあの土地を売ろうとしてもどかんぞ。」などと凄味のある声で申し向けさらに同月中旬ころ、同市兵庫区熊野町付近の被告人米田の内妻高橋洋子方において、前記熊木と同被告人との本件土地建物についての売買交渉の際、右熊木に対し、「社長があのように言っているから売ってやれ。」と申し向け、同年一一月一〇日ころ、右高橋方において、前記蛭子と同被告人の本件土地、建物の売買交渉の際、右蛭子に対し、「親分がこんなに言っとるから売らんかい。」などと怒号し、本件土地、建物を譲渡すべきことを要求し、右蛭子および熊木が被告人らの要求を拒み続けるならば同人らの身体、財産、営業などにいかなる危害を加えるかも知れないような態度を示したこと、被告人米田は昭和二四年当時まで「わさび屋」と称する博徒の一家を構え、山本はその当時の若衆、弘瀬は山本の若衆という関係にあったものであるが、昭和三七年の九月下旬又は一〇月上旬ころ山本、弘瀬が被告人米田に話を持ち込んだところ、同被告人に前記熊木から神戸市の買収にかかる土地、建物を売ってもらうように交渉せよという旨言われたこと、その交渉の結果は常に被告人米田に報告し、指示をもらっていたこと、

(2)  他方、被告人米田は、同年一〇月中旬ころ前記高橋方において熊木と本件土地、建物の売買交渉をし、その際も同被告人は熊木に対し強い態度で交渉に臨んだが、さらに、同年一一月一〇日ころ蛭子とも同所で売買交渉をし、その際被告人米田自身蛭子に対し「若いもんに聞くとあんたとこや弟さんとこにうちのもんがごちゃごちゃ言うて行ったことも知っている、しかし蛭子さん私も市に対していろいろ尽してきている。あの土地は私に任せてくれ、とにかく売ってくれ、あの家はうちがいろいろ複雑になっとる。うちの若いもんも小林に金を貸して入っているんや。わしに売って貰えればあそこのうちの若いもんを出すし、時計屋なんかも話をつけてあと問題がないようにしてやるがどうか。」などという旨申し向けたこと(その際同席していた山本、弘瀬の言動は前記認定のとおりである。)がそれぞれ認められる。

しかしながら、右各事実をもってしても被告人米田と山本、弘瀬間の本件犯行の共謀の事実はこれを認めることはできない。即ち右(1)事実について言えば、交渉の過程における山本らと同被告人との関係をみると、山本らは交渉の結果を常に同被告人に報告し、指示をもらっていたというのであるが、その報告及び指示の内容を具体的に明らかにする十分な証拠が存在せず、右(1)の事実から直ちに同被告人と山本、弘瀬間の共謀を認めることはできない。次に右(2)事実について言えば、同年一一月一〇日ころの高橋方における同被告人の言動は、被害者らにとって威圧的なものであったことは認められるものの、同被告人において、その経歴等をことさらに利用する意思があったとする十分な証拠はなく、「若いもんに聞くとあんたとこや弟さんとこにうちの若いもんがごちゃごちゃ言うて行ったことも知っている。」などの言動についても、同被告人が山本らから具体的にいかなる報告を受けていたか明らかでない以上、そのことから直ちに同被告人において、山本らの脅迫行為によって作出された被害者の畏怖、困惑の状態に乗ずる意思があったと認めるのは相当でなく、さらに同被告人の言動の合間に山本らが被害者に対しこもごも「親分がこんなに言っとるから売らんかい。」などと怒号したことについても、そのことから直ちに同被告人と山本らとの間の本件犯行に関する共謀を認めるには十分でない。従って、被告人米田と山本、弘瀬との間の本件犯行の共謀の事実はこれを認めることができない。

のみならず、同被告人の蛭子との売買交渉の際の同被告人の言動自体をさして恐喝の意思に基づく脅迫行為と認めることも困難である。(なお、右売買交渉に先立つ同被告人と熊木との本件土地、建物の売買交渉の際の同被告人の言動についても同様である。)

結局、本件公訴事実はその証明が十分でないことに帰するので、刑事訴訟法三三六条後段により、被告人米田に対し無罪の言渡をすることとする。

四、判示第四の各事実について

前掲関係各証拠によれば、

(1)  本件土地は昭和三四年頃李斗玉が他から取得し、将来宅地分譲する目的で、同人が護岸工事、地上建物の取毀し、宅地(荒)造成を行ったものであるが(本件土地はその立地条件の不利にもかかわらず、昭和四二年五月時点の銀行の評価で時価約一億三、二〇〇万円余りと評価された程の価値を有していた。)、昭和四一年四月頃、同人の経営は窮迫状態にあり、本件土地もその造成費用等の融資先である関西信用金庫、京阪神建設(株)に対し担保に差入れられており(債権額合計約三、〇〇〇万円)、その弁済を強く迫られているという状況で、同人は本件土地を他に買却してその資金を得ようとしたが前記の状況から思うようにいかず困難をきわめ何人かと交渉をした末、漸く同年八月三〇日末正久左衛門との間で代金額四、二〇〇万円で売買契約を結ぶに至った(それより先七月二三日頃両者の間で売買の予約の成立をみている。)こと、(なお、同人から手付金の一部として交付された約束手形が不渡りになるなど、同人の代金支払い、資金調達ははかばかしく進行しなかったことが認められる。)

(2)  右李斗玉、末正間で本件土地売買の予約がなされた後の同年七月末か八月初め頃、久保田日出和に本件土地を担保に入れて三、五〇〇万円位の融資を受ける相談をしたこと、久保田はその話を同人が出入りしていた金融業木本総業(株)社長孫圭鎬に持込み、孫圭鎬は知合いの被告人米田にその件を伝えたこと、その頃孫圭鎬は木本総業側の関係者とともに同被告人を現場に案内し、同所で物件の説明をしながら、同被告人に対し「この土地の形は東京のホテルオオクラの土地と同じ様な形やで、十億円位の予算でそれ位のホテルやマンションが建つで、兄貴みたいな人は何時までも新開地のパチンコ屋の大将でうずもれるのは惜しい。」などと言葉巧みに申し向け、同被告人が本件土地のために融資する気になるように仕向けたこと、同被告人は右孫圭鎬の言動などから右融資の件に非常に乗気になり、その結果、同年八月二二日頃、同被告人方において、同被告人、李斗玉及び孫圭鎬ら関係者出席の下で、同被告人が三、四〇〇万円(但し、利息天引)出資して、利子月三分、期間二か月の約定で李斗玉に融資する。李斗玉は本件土地を同被告人を買主とした売買の形式で譲渡し(狭義の譲渡担保)、二か月の期間内は三、四〇〇万円で買戻すことができる旨の取引(以下「本件取引」という。)が行われ、その旨明記された売買契約書が作成されるに至り、右金員はその場で渡されたが、登記名義については、同被告人が孫圭鎬に対し、同人の名義にするよう言い、同人もこれを承諾したこと(その結果、木本総業の従業員の清水嘉寿名義で登記された。)、本件取引の際孫圭鎬、久保田らは右金員の中から相当額の「手数料」を取得したこと

(3)  被告人米田は右取引が終った後大東健治に「あの土地を担保流れにしてホテルかマンションを建てよう。」などと話していたこと、その後間もなく、建築士を現場に連れて行き、マンションとしての利用価値を尋ねるなどし、その後京阪神建設(株)の山田正光と共同で本件土地上にマンションを建設する計画を相談し、設計依頼をすると同時に、土地のボーリングまで行ったこと。

(4)  さらに、被告人米田は本件取引後買戻期限到来前に、大東、孫圭鎬、久保田らに命じて本件土地の周辺の土地の所有者と交渉させ、その土地をも購入しようとしたこと、

(5)  一方、李斗玉は買戻期限の直前頃から久保田を通じ、或いは自ら度々孫圭鎬と買戻し交渉をしたが、「先に金を持って来い。」などと言われ、取合ってもらえなかったこと、その際同人は遊田常義らに「本当に木村が現金を揃えて買戻しさせてくれと言って来たら困るがなあ。」などと漏らしていたこと、

(6)  被告人米田は、買戻期限到来前、事務員の北山順一や孫圭鎬に対し、李斗玉が買戻交渉に来ても自分(被告人米田)は旅行中でいないなどと居留守を使うように指示していたこと、

(7)  李斗玉は買戻期限経過後もなお買戻交渉を続けていたが埓があかず、結局追い銭を出させることで妥協し、同年一〇月二五日頃被告人米田の負担にかかる四二〇万円が孫圭鎬から李斗玉側に支払われるに至ったこと、その後、孫圭鎬がその旨同被告人に伝えたところ、同被告人は安くて解決できたと喜び、同人に謝礼金を渡したこと、

等の諸事実が認められる。右諸事実に照らせば、本件取引は、被告人米田と李斗玉間で成立し、その時点で担保のため本件土地の所有権は李斗玉から同被告人に移転したものであり、同被告人は同人から本件土地を騙取する意思で前示行為に及んだものと認定するのが相当である。

なお、公正証書原本不実記載の点について付言するに、判示所為は刑法一五七条一項に該当することは明らかであるのみならず、本件事案は、中間省略登記の場合とは異なり、その登記方法に何ら合理的理由がないだけでなく取引の安全を害する虞もあり、可罰的違法性がないとは言えない。

五、判示第五の各事実について

1. 「預金等に係る不当契約の取締に関する法律」二条一項の「特定の第三者と通じ」とは、預金者と特定の第三者との間に意思の連絡のあることを意味するが、それは必ずしも直接であることは必要でなく、媒介者を介して意思の連絡があれば足りると解するのが相当であり、本件の場合、かかる媒介者を介して被告人両名と、武田との間に意思の連絡があったと認められるから、右要件は充足されていると言わなければならない。

被告人大東に対する本件訴因、罰条の追加の適否について検討するに、検察官は同被告人の各所為は同法二条一項に該当するとして起訴(追起訴)したものであるから、これを検察官が後に同被告人の単独正犯から被告人米田との共同正犯に訴因変更を請求し、これを許可した裁判所の手続に何ら違法はないことは明らかである。

なお、謀介者が預金者と共謀してかかる不当契約をした場合には、同法二条二項の規定がなくても、刑法上当然に同法二条一項違反の共同正犯として処罰できるのであって、あえて二項を設ける必要はないのであり、右二項の規定内容や法定刑をも考え合わせると、二項を特に規定した趣旨は、媒介者が預金者と通謀することなくかかる不当契約をした場合に、これを独立の犯罪類型として特別に処罰することにあると解されるから、被告人大東の判示所為は、右二項ではなくして、一項違反の共同正犯に該当するものと言わざるをえない。

さらに前掲関係各証拠によって認められる、本件犯行に至る事情、犯行態様、犯行後の被告人大東の行動等に照せば、被告人大東は、本件各預金の性質についての認識を有していたことが明らかであり、同法違反の故意を認めるに欠けるところはない。

2. 前掲関係各証拠によれば、当時小樽信用金庫(札幌支店)には被告人米田らの預金の外にも少なからぬ件数の同種の導入預金がなされその額は四億九千万円にものぼっている事実が発覚し、警察の捜査が開始されていたのみならず、金庫側でも吉田らを含む役員らにおいて支店長佐藤公明からの事情聴取等を行うとともに、その対策に着手し、関係各機関、団体に問合わせて、同金庫に導入預金の預金者からの支払要求に応ずる法的義務が存するかどうか等の点について調査、検討している段階にあり、同年九月二六日の役員会においてもその結論は、当面警察の捜査待ちとし、支払うべきであれば支払う、法律問題に及ぶので弁護士にも相談する、というものであったというのであるから、吉田らにおいて、被告人米田からの満期未到来の導入預金である定期預金の即時解約、即時払戻しの要求に対し、とりあえず前示の態度をとったのは、やむを得ないことであったと言うべく、のみならず、右状況下においては、かかる時期に同金庫側が右定期預金を満期に必ず払戻しする旨の誓約書を書かされることを受忍すべき義務もなかったと考えるのが相当である。従って被告人米田の前示行為は強要罪を構成すると言わなければならない。

ここで、被告人米田の行為につき正当防衛が成立する余地があるかを検討するに、既に述べたとおり、被告人米田の前記要求に対する同金庫側の態度は前記状況下においてはやむを得ないものであったと考えられ、これを被告人米田の財産に対する急迫、不正の侵害と言うことはできず、従って正当防衛の要件を欠くと言わなければならない。

犯行態様を勘案すれば、被告人米田の行為につき可罰的違法性がないと言うこともできない。

六  判示第六の二の事実について

山田正光の検察官に対する各供述調書(43・6・28、8・13)被告人米田の検察官に対する各供述調書(43・9・16、10・3)等によれば、山田正光は神戸観光ホテルの土地、建物の売買に関し、抵当権抹消費用や立退料等として約三、五〇〇万円乃至五、〇〇〇万円を負担し被告人米田を通じてその支払をしたが、これとは別に、被告人米田に、仲介手数料として昭和四一年四月ころから同年八月ころの間五回にわたり一、〇〇〇万円ずつ合計五、〇〇〇万円を現金、小切手で支払った事実が認められ(右認定に反する各証拠は措信できない)、右五、〇〇〇万円も被告人米田の所得に含まれると認めるのが相当である。

(法令の適用)

一、被告人米田、被告会社関係

被告人米田の判示第一の一の所為は、法人税法(昭和四〇年法律第三四号、以下「法人税法」という。)附則一九条により、同法による改正前の法人税法(以下「旧法人税法」という。)四八条、一八条一項に、判示第一の二の所為は、法人税法一五九条、七四条一項二号に、判示第三の二の所為は、刑法六〇条、二四九条二項、一項に、判示第三の四の所為のうち公正証書原本不実記載の点は同法一五七条一項に、行使の点は、同法一五八条一項(一五七条一項)に、判示第四の一の所為は、二四六条一項に、判示第四の二の所為のうち公正証書原本不実記載の点は同法六〇条、一五七条一項に、行使の点は、同法六〇条、一五八条一項(一五七条一項)に、判示第五の一の各所為は、いずれも刑法六〇条、預金等に係る不当契約の取締に関する法律四条一号、二条一項に、判示第五の二の所為は、刑法二二三条一項に、判示第六の各所為はいずれも所得税法二三八条に、それぞれ該当するが、判示第三の四、第四の二における公正証書原本不実記載と行使の間には手段、結果の関係があるので、いずれの場合も刑法五四条一項後段、一〇条により一罪として重い不実記載公正証書原本行使の罪で処断することとし、判示第一、第六の各罪については各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑(金額は情状により、いずれもその免れた税額に相当する金額以下とする)を併科し、判示第三の四、第四の二の各罪については各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、判示第五の一の各罪については各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑の長期が最も長く、且つ、犯情の重い判示第四の一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示第一、第五の一、第六の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人米田を懲役三年及び罰金三、五〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人米田を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用のうち、別表(二)証人名欄番号1乃至12の各証人に支給した分は、刑事訴訟法一八一条一項本文、又は同条一項本文、一八二条により、同表被告人名欄記載のとおり同被告人に単独で、又は被告人下糀若しくは被告人大東と連帯して負担させることとする。

被告会社の関係では、判示第一の一の所為は、法人税法附則一九条により旧法人税法五一条一項、四八条、一八条一項に、判示第一の二の所為は、法人税法一六四条一項、一五九条、七四条一項二号に、それぞれ該当するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金八〇〇万円に処することとする。

二、被告人大東関係

被告人大東の判示第二の所為は、刑法六〇条、二四九条一項に、判示第三の一の所為は、同法二四七条に、判示第三の二の所為は、同法六〇条、二四九条二項、一項に、判示第三の三の所為のうち公正証書原本不実記載の点は同法一五七条一項に、行使の点は同法一五八条一項(一五七条一項)に、判示第五の一の各所為はいずれも刑法六〇条、預金等に係る不当契約の取締に関する法律四条一号、二条一項に、それぞれ該当するが、判示第三の三の公正証書原本不実記載と行使の間には手段結果の関係があるので、刑法五四条一項後段、一〇条により一罪として重い不実記載公正証書原本行使の罪で処断することとし、判示第三の一、第三の三の各罪については所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し、判示第五の一の各罪については各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により、刑の長期が最も長く、且つ、犯情の重い判示第三の二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示第五の一の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人大東を懲役二年及び罰金三〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人大東を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用のうち、別表(二)証人名欄番号6乃至15の各証人に支給した分は刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により、同表被告人名欄記載のとおり、同被告人に、被告人米田若しくは被告人下糀と連帯して負担させることとする。

三、被告人下糀関係

被告人下糀の判示第二の所為は、刑法六〇条、二四九条一項に、判示第三の二の所為は、同法六〇条、二四九条二項、一項に、それぞれ該当するが、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第三の二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人下糀を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予し、訴訟費用のうち、別表(二)証人名欄番号5及び13乃至15の各証人に支給した分は、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により、同表被告人名欄記載のとおり、同被告人に、被告人米田若しくは被告人大東と連帯して負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高橋通延 裁判官 寺田幸雄 裁判官 若宮利信)

別表(一)

〈省略〉

別表(二)

〈省略〉

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